(元)親

内職

母はお土産用Tシャツを包装する内職をしていた

近所に大柄で愛想のいいおばちゃんがいる染め物工場があり、そこから仕事を請け負っていた

そこは道路から低い位置にあるせいかいつも暗くてジメジメし、あちらこちら染料で汚れていた

よく母に連れられその小さくて汚い工場へ遊びに行くことがあった

中には大汗のおばちゃんと、大きな機械があり真っ白なシャツを染めたり、プリントを施していく

子供ながらに黄色や紫のダサいシャツを誰が買うのか不思議だったが「観光客用で空港とかで売るんだよ」と教えてくれた

染め、乾燥までは工場で行う。そこからシャツを持ち帰り包装するのが母の内職だった

ただ持ち帰ると言っても昨日は100枚、今日は200枚と枚数が多く、運搬から大変で何より小さな部屋を埋め尽くし、子供の遊ぶスペースを奪う。戦力として子供を使う。

工程は段ボールで作られた簡易折り畳み機とでも言おうか…開かれ切り込みが入った段ボールの板の上にシャツを置き段ボールの端を掴みながら内側へパタパタと折ると、最終的にTシャツが綺麗に畳まれる

次に畳まれたTシャツの首元にサイズが書かれたシールを貼る、大きく透明なOPP袋に入れ裏をテープ留める、最後は表に2枚目となるサイズシールと確かもう1枚シールを貼って終了となる

大人なら全行程問題なくこなせるが、子供は年齢と共に難易度が上がっていく

まず戦力としてのスタートは商品であるシャツに触れない事、それがリビングに広がっていたとしても絶対に触れない事

次に雑用係で指示された枚数を運んだり、梱包材を母に渡したりする

いよいよ商品に触れる事ができるシール貼りで「絶対に歪まないように!綺麗に!」とよく注意された

最後はいよいよシャツ畳みだ、しかしこれはチェックが厳しくよくやり直しをさせられ大人のようにリズムよくポンポン畳めなかった

一年を通し一番忙しいのは夏だ、夏になると足の踏み場が家から無くなる

特に包装されたシャツはツルツルした袋に入っている為に、多くを重ねようとすると雪崩が起きてしまい横に場所を取る。なので夏は派手なシャツ達に囲まれ遊び昼寝した

今思うとその内職を父が手伝っていた記憶はないが、それに違和感は無くただ父らしいなと思う

私は選択の余地なく手伝っていたが、それでも小遣い制が導入させていない中、数十円でも頂けるのは嬉しかった

ただ親になった私が子供に内職を手伝わせるかと言うとNOだ。

大人になったら嫌でも働かないといけなくなる。それなら子供の時期は沢山遊んで欲しいし、子供との時間を作るため私なら子供が不在の時間を使って内職するだろう。

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