(元)親

親が出産で入院していた時、大きな箱が届いた

カニ

それも箱いっぱいに手足を伸ばした大きく立派なカニ

初めて見たが、子供ながらに「これは美味しくて、高い!」と即理解した

母の知人が出産に合わせ贈った物らしいが、それを父が食べようと言った

もちろん子供の私が断る訳もない

大きくて長いカニの足を折りながら鍋に入れ茹でる

食卓に新聞紙を広げ、ティッシュと殻を入れる皿をスタンバイし いざ!

言葉少なく皆でしゃぶりつく、殻が割れない部位は吸い付く

無論、カニ用のスプーンなんて家には無いので、片箸でかき出す

ゴミ用の皿から食べかけのカニを「ここまだ食べられるよ!」と父に戻されつつまた食べる

一生懸命、無心にカニと向き合っても一度で食べられず、その日の夜もカニ三昧だった

とても美味しく、特別感のある日だった

しかーし、その日はやって来る

母が退院した

ここからは平凡なコントのオチ如く

空き箱を見つけた母が「これ全部食べたの?!」「退院したら食べようと思っていたのに!」

いつの時代も食べ物の恨みは恐ろしい。空き箱片手に母が怒り、父が笑って切り抜けようとしたが叶わず、最後は父の逆ギレで終わった。

アイツらと食べた最初で最後のカニだった

カメハメハ

2022年3月29日

内職

2022年4月5日